足跡(寺社)81・旧東海道品川宿あたりの寺社「海蔵寺・天龍寺」……2019.3.8

青物横丁から新馬場にかけての寺院を訪ねた2019年3月8日のこと……

本光寺から第一京浜を南に下り、ゼームス坂通りに入る路地の入り口に「時宗 海蔵寺」の寺号碑が目に入った。左の碑には「江戸時代無縁並首塚」「関東大震災殃者塚」と刻まれている。

海蔵寺」山門……(品川区南品川4-4-2)
 墓地には立ち入らなかったので手を合わせて来なかったが、同寺には品川区指定史跡「海蔵寺無縁塔群」が存在すると案内板にあった。
 品川にあった溜牢(牢屋)で亡くなった人々の遺骨を集めて、宝永5年(1708年)に築かれたもので、鈴ヶ森刑場で処刑された人の遺骨の一部も埋葬され「首塚」と呼ばれるようになる。天保の大飢饉(1833~1839年)で亡くなった215人を祀る「二百十五人塚」も合葬されているとのこと。

時宗と言えば一遍上人……念仏の行者は、知恵も愚痴も、善悪の境地も、貴賤高下の道理も、地獄を恐れたり、極楽を願うたりする心も、悟りも、すべて捨てて申す念仏というものが、阿弥陀仏の本願に一番かのうものである。この心を心として声高らかに称名すれば、この世が浄土であると説いた上人の心に出会えたような海蔵寺だった。

 

永仁6年(1298年)に創建された深広山無涯院と号す海蔵寺は、前記のように数多くの無縁仏を供養していたことから「投込寺」とも呼ばれたそうだ。

本堂と向き合うように「大震火災横死者供養塔」……関東大震災で品川の海岸に流れ着いた無縁者供養のために昭和7年(1932年)に区内の各宗派が合同で造立したらしい。阿弥陀仏の前で、南無阿弥陀仏

阿弥陀仏と並んで、大正4年(1915年)建立の「京急鉄道轢死者供養塔」……京浜鉄道の歴史を見ると、1両の電車が満員の乗客を乗せて六郷橋から大師へ向けて、わずか2㎞の区間を走ったのが始まりで、明治32年(1899年)1月21日午前10時のことだったと。そして、品川乗り入れを実現したのは明治37年(1904年)とされているが、供養塔建立までの11年間に、いったい何名が轢死されたのかは不明だ。今のような高速で走行する電車でなかったからか、物珍しさで近付いた人が多くおられたのかもしれない。車輪の下敷きになった方々に南無阿弥陀仏
 同じ「轢」でも、軋轢(あつれき)の中で心を踏み潰されていく「車輪の下」はヘルマン・ヘッセだったか。

境内奥から山門方向……松のすぐ脇に……

境内社「宝蔵稲荷神社」……『當稲荷社は稲荷の神と同一とする夜叉神の吒枳尊天(だきにてん)を本尊とする明治23年(1890年)9月町内稲荷講中により旧跡に再建され火防の稲荷として霊験あらたかで土地の人々の安全守護神として尊崇され春秋二季に大祭が盛大に行われる』と掲示板にあった。ようするに火防の稲荷ということで納得しておこう。

誰が置いたかお地蔵さん……

海蔵寺参道を出て西に50mほど、ゼームス通りの曲がり角に「天龍寺山門」(品川区南品川4-2-17)……左に行けば大崎西口方面に抜けられ、30数年前は裏道としてよく通ったなと懐かしかった。

天龍寺境内……とてもスッキリしていた。

「本堂」……瑞雲山と号す天龍寺曹洞宗寺院で、創建は天正9年(1582年)のようだ。
 創建時の和尚か2世かは不確かだが、徳川家康に呼ばれ江戸城に登城していたらしい。城まで距離があり登城には不便だったとして、家康は下谷台東区)に新たに天龍寺を創建し和尚を住まわせたのだが、そのために当寺は一時荒廃したようだ。その後、江戸宿寺として利用し再興したらしいが、迷惑だったかもしれない。復興、再興には大いなる労をようするのだから。政治家たちよ、能登半島もなんとかしてあげて……

本堂右は庫裏かしら……

たぶん枝垂れ桜だろう。こじんまりとしていたが、端正なお庭だった。

山門に向かって……失礼しました。

疲れたので大井町駅方向へ勝手に足が向いた。何といっても16ヵ寺と1神社を梯子したのだから。

よさげだったが、15時53分だったからパスした。

ゼームス坂……大した坂ではないが、ダラダラ長い。

すずらん通り」だって。駅に近づいているみたいで、店数が増え出した。

ゼームス坂通りの途中から、方向感覚で横道に入ると良い風情に出会った。

こっちも良い風情……さすがにスナックはまだだが、すでに開店している居酒屋もチラホラあった。コロナ禍のときは、どうされていたことか……

店舗脇の通路を抜けると……

またまた登場……いったい何店舗あるのだろう。縄のれんが私を呼んでいたが、まだ開店前で助かった。

おっちゃん……どこへ飲みに行くのかしら? 私も行きたかったが断念した。

裏の飲み屋街を抜けると別世界の大井町駅前……少々お疲れだったので電車で帰宅した私だった。
今日の「My First JUGEM」は……『アジサイの新芽……』