旅と旅行

 10月11日からスタートしたばかりの「全国旅行支援」だが、サイトでは早くも売り切れが相次いでいるそうだ。岩手の「平庭山荘」という旅館の予約分は、支援開始前の10月8日時点で売り切れたと。
 今回、国は全国旅行支援の予算額約5600億円を、今までの利用実績に応じて47都道府県に配分した。さらに、それを受け取った自治体がそれぞれの判断で旅館、ホテル、旅行サイト、旅行代理店に分配していくという形だという。「平庭山荘」の場合は、配分額が約50万円ほどで、70泊分だったためすぐに埋まってしまったのだと。これでは到底12月20日まで続けられないし「必要に応じて国土交通省において適切に対応するものと考えている」と昨日、松野官房長官が述べていたが、支援開始以前の9日~11日の3連休にも多くの人が出かけた。安くなるから行く人ばかりではないだろう。コロナ禍で苦しめられた観光業への支援は必要だが、違うお金の使い方は無いものか。

 急遽始めることを決定したからか、旅行サイト上の予約がホテル側では管理できていないなどの不具合もあるらしい。システム構築が間に合わなかったのかもしれないが、11日に急用でバタバタ出かけた連れ合いから「私が予約した(○○会社名は伏せる)は、サーバーがダウンしたらしく、ホテルに予約状況が入っておらず、チェックインにえらい時間がかかりました」とメールが来た。

 なぜ、全国統一で事務局が存在して行われた「GoToトラベル」とは異なる、今回の都道府県ごとの運営にしたのか分からないが「ワクチン接種証明書」の対応もまちまちらしい。「2回接種でも利用可」のところもあれば、2回接種だと陰性証明が必要なところがあったり。また、グループ中にワクチン未接種者がいた場合は、その人だけ割引対象外になる場合と、全員が割引対象外になる場合もあると言う。
 宿泊客の中には「以前のGoToキャンペーンの方が利用しやすかった」といった声も上がっているようだが、旅行大手エイチ・アイ・エス(HIS)の子会社が架空の宿泊契約を結ぶなどして多額の給付金を不正受給した件もあったから変えたのかもしれない。住まいの近くにあった旅行会社も、長引くコロナ禍で閉店している。現在は店舗を持たず、予約をしてオンラインでの申し込みができるようだが、私には無理そうだ。そもそも、行かないから良いのだが……年寄りには生きにくい時代になっていくことはさみしい。蛇足ながら、予算の上積みや期間延長は岸田政権の支持率など状況によって変わるんだろうな。

  私の知らない作家さんの本「フーテンのマハ」……連れ合いの枕元に置かれていた。
開くと冒頭に『人生で失くしたら途方に暮れるものは何か? そんなふうに誰かに訊(き)かれたら、私は迷わず答えるだろう。(改行)それは旅。』
『旅が好きだ。「移動」が好きなのだ。移動している私は、なんだかとてもなごんでいる。頭も心もからっぽで、心地よい風が吹き抜けていく。』作者は「頭も心もからっぽ」の移動が好きだと言う。「旅」とまでいかないが、私が知らない道をただ歩くのも同じことかもしれない。

 今回のキャンペーンは「旅行支援」だが、「旅」と「旅行」とはどう違うのか? 多くの辞書には、どちらも「家を離れてよその土地へ行くこと」とされているが、ヒントは作者の『旅が好きだ。「移動」が好きなのだ。』の言葉にある。そう、旅とはよその土地へ出向く移動時間であり、移動そのものを楽しむものなのだろう。
「到達までの時間を楽しむ」旅に対して、「到達してからの時間を楽しむ」のが旅行だとすると、旅先で、割引を受けられる観光施設などを訪問する今回のキャンペーンを「旅行支援」と命名したことは正しいのだろう。。
 旅行というより、旅と言った方が好きな私はふと思う……平安時代空海真言密教の布教活動に日本国内を歩きまわったのは旅の原点の一つだろうと。

今日の「My First JUGEM」は……『今朝の庭で……』