商売のスタイル……

小雨の中を、傘もささずに若い女性がチラシをポスティングしていた。「近くで明日オープンするので、よろしかったらお越しください」と言われ、たまたま玄関先で蛍族をやっていた私は受け取った。

サプリメントや自然食品の店らしいが「ライブストア」なる言葉が気になった。店を構えるのは約3ヶ月間で、その間に試して気に入った商品があったらその後は注文に応じて宅配で届くという。無添加・低添加食品、低公害洗剤、自然派化粧品、栄養補助食品など約1,500種類の商品を取り扱っているようだが、各地域に出展し、固定客を作る間だけ店舗営業をするということだ。
「スーパーソフト食パン2斤」と「調整豆乳」とが100円ポッキリの優待券があるが、残念ながら私は行かない。ごめんなさいね。

昨年秋、私は電気椅子と呼んでいた「レピオス14000」なる電位治療器を置いて座らせる店に行ったことがある。5回目までは無料だし、その後は一ヶ月500円だったが20回ほど通って止めた。20分座る間に健康管理の話を聞かせるのだが、常連客が100名ほど集まったころ、しきりにケイ素の話が始まった。来る日も来る日も「ケイ素は体に良い」ということになり、水溶性珪素シリカプレミアム Plus」の販売促進になる。千円や二千円ではなく1ボトル一万円以上の商品の定期購買。銀行口座からの自動引き落としだが、飛ぶように売れていた。商品は家庭に届けられるから、買いそうな新規客がいなくなったら店舗は撤収すれば良い。開店から約半年後に、電気椅子「レピオス14000」を販売して店を閉めた。1台100万円を超す機会だが、街のうわさではかなり多くの人が購入したようだ。
 電気椅子が閉めてから、同じ場所に登場したのが「高藤プラズマJAPAN」……物理学者の髙藤恭胤(たかふじ やすたね)氏が製作した「プラズマメッドベッド」なるものが置かれているらしい。高気圧状態のカプセル内に横たわり、高濃度の溶解型酸素と活性水素を同時に吸引しながら、全身でプラズマエネルギーを浴びる健康器具と云う。細胞の再生速度を上げ、免疫力を高め、自然治癒力を引き出すと謳われているが、料金が高額だ。小耳に挟んだだけだから定かではないが、50 分で8,000円らしい。週一回でも月に3万円を超える出費になるが、健康にはおカネに糸目をつけないお年寄りは少なくないのかもしれない。同店の目的は不明だが、ずっと営業されるわけではなく、そのうちに入れ替わるのだろう。

 先日テレビで草津温泉をやっていた。温泉旅館と言えば食事も楽しいのだが、夕食抜きや素泊まりの旅館が増えているらしい。旅館側の事情はスタッフの人手不足らしく、食事付きプランはあっても数量を減らしている宿もあると伝える。一方、食事付きは高いので外食を好む観光客も増えているそうだ。そこに目を付けた若者がラーメン店を開いたところ、このゴールデンウイークは繁盛したと。温泉街の食事処などは早く閉店してしまうため、遅くまでの営業を試みた彼は成功したらしい。

 知人たちと伊香保温泉に行った2017年……そこまで運転してきたM氏のために、石段街でアルコールを所望できる店をさがしたがラーメン屋が1軒だった。甘味や立ち飲みの店はあったが、座って飲める店は無かった。宿にチェックインしてひと風呂浴びた後、河鹿橋ライトアップを見てから、晩御飯の店を探すことに。誰が言いだしたのか、今回は宿ではなくたまには外食にしようということにしたお蔭でえらい目に遭った。石段街にはそれらしき店がないことは確認済みだったので、ラーメン屋で仕入れた「料理の品数が一番多い」という、少し離れた店を目指したが閉まっていた。仕方なく引き返して温泉街の中をウロウロしてはずれに見つけた「居酒屋 香」に入ったのだが、店名と共に「ラーメン」と大きく書かれていた。「またラーメンか」とも思ったが他にないから即入店。餃子を勧められたが昼に食べたばかりだったから「こんにゃくに味噌ダレ」「揚げワンタン」と「イカ焼」……一人一品頼んだのだが、私は味噌ダレも揚がワンタンも好きではない。イカを頼んだのは私だったが、まぜて焼いたワタが口に合わずほとんど他人任せになってしまった苦い思い出がある。
 宿周囲の路地も宿泊者の姿がなかった当時は、宿で夕食をとるのが当たり前だったろうから、食事が出来る飲食店の数も少なかったり、早く閉店するのが普通だったのだろう。時代に合わせて商売のスタイルも変わっていくということを再認識した今日だった。

【附けたり】(2017年11月7日の写真)
台湾の気さくな女将がやっていたお店であり、悪口ではないことを明言しておく。もし機会があったら、次回はラーメンを頼もう。

今日の「My First JUGEM」は……『サクランボ色付いた……』