足跡(寺社)249・若松寺と薬園坂・釣堀坂……2020.9.30

南麻布の寺院を訪問しながら坂道を歩いた2020年9月30日のこと……

延命寺・淨専寺を過ぎると絶江坂が終わるが、停車中の車のあたりに……

寺院らしきが目に入る。

「若松寺」(港区南麻布3-10-7)……あったが入山お断りを感じた。理由は推察できた。

寺号碑に「日蓮宗不受不施派」とある……「他宗には施さず、また他宗には施しを受けない」不受不施の教義は知っていたが、同宗派を名乗る寺院には初めて遭遇した。
 時は文禄4年(1595年)、京都東山の方広寺に大きな大仏を建立した豊臣秀吉は、亡き父母の供養のための法会を営む際、「天台・真言・浄土・律・禅・浄土真宗日蓮時宗」の8宗から各百人を招集する千僧供養会(千僧供)を企画する。
 出席欠席をめぐり日蓮宗内で激しい論議が起こるなか、断れば秀吉の怒りをかって日蓮宗の僧侶が追放されることを懸念した本満寺・日重が「日蓮宗門としては出来ないことだが」としながら「一日だけ出席して、以降は宗旨を申し上げて断ろう」と妥協案を出す。
 ところがどっこい「日蓮聖人の掟を一度たりとも破ってはならない」と妙覚寺住職・安国房日奥が毅然と異議を唱える。他宗の信者に経を読むことも不受不施の教義に逆らうことなのだろう。この日奥を派祖として日蓮宗不受不施派が生まれる。
 時は少し移り秀吉が亡くなった後の慶長4年(1599年)、今度は徳川家康が日奥を呼んで「一度でいいから千僧供に出てよ」「他宗と一緒がいやなら別室でもいいよ」「食事(施し)がいやなら食べなくてもいいよ」と折衷案を提示したのだが、日奥は不受不施の教義を頑なに貫き通した。結果として、家康は日奥を対馬に流した。(逆らうものは排除する……そんな人物はいつの時代も変わらず存在している。)
 流罪を解かれて日奥が戻ってくると、池上本門寺の日樹や中山法華経寺の日賢など有力な僧侶たちが彼に同調しはじめる。二代将軍秀忠の夫人・江(ごう)の供養を辞退した日樹は信濃流罪となり、さらに影響を与えたとして日奥は再び対馬に流された。同時に不受不施を唱えることを一切禁じられ、信奉者は地下に潜るようなかたちで長いこと法脈を守り続ける。晴れて不受不施が認められたのは明治9年(1867年)、徳川幕府が倒れて後のことであった。(不確かだが、東京都には1ヵ寺しかないらしい)

「龍華山若松寺」……市谷にあった「自證院」が不受不施の禁令によって改宗することになる。そこで、日正上人が麻布本村町に「自證庵」として再建し、昭和17年(1942年)に「若松寺」と改称したようだ。理由は二つ考えられるが、憶測はやめておく。
 ちなみに自證院は日蓮宗を改め、現在は天台宗のようだ。見せしめの流刑や禁止令によって改宗せざるを得なかった寺院は全国に多数ある。不条理な弾圧はあかん。

失礼してフェンス越しにパチリ……

宗派にこだわらず各寺で手を合わせる私には資格がないと思いながらもフェンス越しに合掌・南無妙法蓮華経……

門前はT字路……右が絶江坂への道で…

もう一方は200mほどだろうか、東に下る坂……名前があっても不思議ではないが坂標は見当たらなかった。

若松寺をちょいと北へ、カーブを道なりに歩くと……

正面突当りに……

南北に走る道……道の反対側に坂標が立っている。

ここが「薬園坂」の坂上……『江戸時代前期 坂の西部に幕府の御薬園(薬草栽培所・小石川植物園の前身)があった。なまって役人坂・役員坂と呼ぶ。』と書かれていた。

南に向かって下る薬園坂……

ほんの少し薬園坂を下ると、右(西)へ向かう坂道がある。「釣り堀坂」の入り口……

東から西へ抜ける坂道……

下り切ると今度は上りになるが、両方合わせて釣り堀坂と呼ぶようだ。残念ながら坂標はなかった。

下り切ると上りが待っている。よせばいいのに、歩きやすそうな石段があったので上ってしまった。

他所を見る予定だったので、意味なくこの石段を引き返した。元気だった頃が懐かしい。

釣り堀坂の底から東の坂上に戻る。右手はマンションだが、左手は昔ながらの住宅。

坂の北側の住宅街に入ってみた。10数年前、仕事をサボってこのあたりにあった釣り堀を見に行ったことがある。10m四方ほどの小さな釣り堀だったが、坂の名の由来になっているのだろうか。
 この日もいくつかの路地を入ってみたが、釣堀は見つからなかった。それはそうだ、調べたら「衆楽園」という釣り堀は2018年5月29日で閉園したとのこと。

横を通っても座り込んで微動だにしないネコがいた。

ちょっと近づいたら、さすがに立ち上がった。僕はいじめないのに……
しかし、この辺りの住民は足腰が強くないと生活に困る。電チャリなら平気なのかもしれないが、雨降りの日は乗れないし毎日のことだとしんどい。私は一度で降参した。

今日の「My First JUGEM」は……『想定内と想定外……』